漢字サインの作り方・書き方・崩し方を現役のプロが実際に使っているコツやテクニックを紹介しながらお届けします。
先にお伝えしておくと、漢字サインの難易度はMAX(=激ムズ)です。
かなり経験を要する分野ですので、めげずに繰り返し練習してみてください。
サイン作りの基礎・基本を学んでからでも遅くありませんので、こちらの記事を参考にしてみてください。
▶サインの作り方:初心者から上級者まで、プロが教えるデザインとテクニック
この記事の目次一覧
漢字サインにまつわるエトセトラ
漢字サインを作成するのは難易度が高いとお伝えしましたが、多少無理してでもチャレンジして漢字サインを作っておくと、他にはないメリットがたくさん存在します。
様々な用途が期待できる漢字サイン
漢字サインは英語サイン以上に使う機会が多く存在します。
書類への署名やメモ、持ち物への名入れ、手紙、色紙など、気づいていないだけで使い方は無限大ですね。
漢字特有の美しさ
漢字サインには英語サインにない独特な美しさがあります。
サインは基本的に世界共通語の英語が多く使われていますが、敢えて漢字を使うと差別化につながりますし、海外の方からの受けもいいと言われていますね。
長い名前もスピーディーに書くことができる
名前を素早くスピーディーに書きたいという気持ちから漢字サインが欲しい方もいらっしゃいます。
こちらの動画を御覧ください。
これは私の名前を楷書とサインで書き比べた動画ですが、圧倒的にサインの方が素早く書くことができます。
漢字サインの作り方・書き方・崩し方
それでは具体的なテクニック紹介にうつります。
日本語の常用漢字は2,000字以上あり、全ての組み合わせをここに載せることはできないため、応用しやすい技法を中心に紹介していきますね。
意図的に文字の堅さを残す崩し方もありますが、まずは基本から身につけていきましょう。
横線があれば伸ばして囲んでみる
漢字に横線があればそれを大胆に伸ばしてフルネーム全体を包み込む線として使ってみましょう。
大きく囲む崩し方は基本的にどんな人の名前にも使える有効的で簡単なテクニックです。
見た目もサインらしくなり、いかにもサインが上手な人という印象を与えることもできますね。
横線を見つけて繋げる
漢字を並べ、共通する横線を見つけて自然な線で繋ぐ崩し方があります。
『神田』の例でいくと、上側(赤線)と下側(青線)に1本ずつ横線で繋がりそうな箇所が見つかります。これらを一筆で書いてしまいます。
漢字特有の硬さを無くし、スピード感と柔軟性を感じるスタイリッシュなデザインになりますね。
連続する形を見抜く
フルネームをすべて繋げる場合、漢字の中に似た形(パーツ)を見抜きましょう。
上の例では囲いの形が共通していることがわかりますので、全てを1本の線でリズミカルに連続して書くように崩しています。
今回のサンプルでは4字とも同じ大きさになるようバランスよく崩していますが、1つの文字を大きく強調したり、逆に小さく書いてアンバランスさで特徴づけるテクニックもあります。
共有可能な線を見つける
隣同士の漢字で共有可能な線はありませんか?
『守』の縦線と『屋』の縦線が近い位置にあることに注目して1本の線を共有するデザインに崩しています。
宀(うかんむり)は横線を長く伸ばすだけで表現できるため、大胆に『守』を省略して点1つを打ったというわけです。
『屋』は短い横線を何本かクシャクシャと書いて表現しています。
途中の文字から全体を囲む
フルネームを囲むデザインを採用する場合、途中の文字からぐるりと全体を覆う線を見抜いて1本の線で繋げることができます。
難易度は高いテクニックですが、見た目の印象は非常にスタイリッシュですね。
このように全体を囲む技法は始めからサイン全体のサイズ感を決めることができます。
決められたスペース内にサインを書かなければいけない時には重宝する崩し方といえるでしょう。
ご参考までに、同じ川崎勝之というサインを『連続する形を見抜く』のテクニックで書くとこんなデザインに仕上げることができました。
よく目を凝らすとどの漢字にも縦線が共通して含まれていることがわかります。
それらを1本線でつないでサインに仕上げました。
同じ名前でも崩し方1つで全く異なる雰囲気のサインに仕上がることがわかりますね。
英語より圧倒的に画数が多く複雑な漢字だからこそデザインのバリエーションは多岐にわたり、それ故に難易度が高くなっているのです。
不要な線を活用する
デザイン性を出す目的で本来は使う必要のない線をあえて強調させるテクニックです。
上記の例では最後の『治』の口の線を左方向に長く伸ばしてサインが完成しています。
本来この横線は不要なものですが、『堤』の長く伸びた横線がある点に注目し平行線を並べることで印象深いデザインに仕上げています。
漢字のみならず英語サインにもいえますが、サインを長い線で締めることでリズムが生まれ、書いていて楽しい気持ちにさせてくれる効果があります。
見る人にとってもサインっぽさが感じられますね。
線を大幅にカットする
複雑な構成の漢字をとにかくスッキリとシンプルに表現することを重視し、削れる線は削り、文字の大枠だけがわかるように繋ぐ上級テクニックです。
できるだけ画数を減らすために漢字同士のつながりを見抜くだけでなく、必要最低限の線だけで構成するのですが、ほぼ無数ともいえる漢字のつながりを全てパターン化するのは難しく、多くのサインに触れて経験を積むことが要求されます。
異なる書体を参考にする
草書体や中国語の簡体字をサイン作りの参考にしてみましょう。
草書体はいわゆる崩し字と呼ばれ、漢字の速記を目的とした古来の字体です。
簡体字は中国語の漢字をシンプルに表記したもので、簡体字の一部には草書体を織り込んだ字も見られます。
草書体はゆるゆると柔らかい字が大きな特徴のため、やさしい雰囲気のデザインのインスピレーションも浮かびやすいかもしれません。
草書体や簡体字をサインのようにつなげるためにはこれまで紹介したテクニックを駆使する必要がありますが、文字をシンプルに表現するための参考にはなるでしょう。
複雑な字ほど大胆に崩しをかんがえる
複雑な漢字であるほどシンプルな見た目になるようにします。
画像は西園寺千夏さん(仮名)のサインですが、この中で複雑な字は園と夏ですね。
園の字は囗(くにがまえ)を園で表現し、内側は数字の3を水平方向に逆にしたような形でシンプルに表しました。
夏の字は、千から伸びる縦の線を活かしています。主に最後に右下への払いだけを表現して夏と読ませています。
字が複雑すぎて書くのに時間がかかる、画数が多くて大変、という字ほど優先的に崩すように考えてみましょう。
字の輪郭を残して他は崩す
このサインは『春風』の漢字を崩しています。
春と風を普通に書くと線の密度が高い文字ですが、全体の輪郭がわかる程度に崩しています。
春の字は、内側の日の字を極端に小さく表現し、さらに横3本の線を「線と点」で表現することで、春の字の輪郭を感じさせています。
風の字は、几(かぜがまえ)を三角形で表現し、内側の虫はほんのわずかな波線で表しました。
このように、漢字の特徴がわかるパーツを残すことにより、それ以外の線を大胆に省略しても可読性を残した字に仕上げることができるのです。
直線を繰り返し使う
多くの縦線で構成される漢字の場合、サンプルのように繰り返し直線を並べてギザギザした印象を見せることで力強いアグレッシブなサインに仕上がりますね。
このサインのポイントは連続する縦線なのですが、それ以外でも『前』から『良』までを結んだ横一本線が挙げられます。
間に『川』があり、本来であればこの字に横線は無いため、全体を横一本線でつなぐ発想は浮かびづらいのですが、ぜひ視野を広く持ちましょう。
前後の文字の繋がりだけでなく、全体の構成が見れるようになるとサイン作りの幅が広がってきます。
素早く書ける漢字サインを作成する
複雑な漢字のお名前を楷書で書く度に時間がかかって面倒くさいのでサインが欲しい。
そういう方も少なくないでしょう。
例えばこんな具合に画数の多い字もサラサラと崩してサインにすることができます。
素早さを重視した漢字サインは、とにかく漢字と漢字をつなげて書くことを意識して崩す必要があります。
上の例でいくと『藤』と『和』の2文字は原型がほとんどわからないぐらい強めに崩しを取り入れていることがわかります。
特に『藤』の字は画数が多いため楷書で書くと大変ですが、サインにするとわずか0.5秒ぐらいでしょうか。
ただし、所要時間が短いサインになればなるほど判読性は低下します。
もともとのお名前の漢字がシンプルな文字であれば別ですが、これらはトレードオフの関係にあるため何を優先したサインが欲しいのか事前に考えておくといいでしょう。
かわいい漢字サインを作るコツ
漢字をかわいく見せるのはかなり上級テクニックが求められます。
カタカナと同じで角を取って丸く見せるのは基本ですが、囲みやイラスト化、大胆な崩しがポイントになります。
文字を柔らかい線で囲む
文字全体をぐるりと囲むのはおすすめのテクニックです。
とりあえず・・・という言い方は雑ですが、囲むとなんとなくそれっぽい雰囲気を演出することができます。
ただ囲むだけでなく、続けて漢字の線につながればベストです。
上の例は『佳』の字でぐるぐると表現した箇所につなげています。
もちろんマークを入れるのも効果的ですので、適宜散りばめてみましょう。
漢字から連想するものを入れる
漢字を見て連想するイラストやマークを入れるとサインのオリジナリティが高まります。
上の例では『鶴』の字から羽のイラストを『千』に使っています。
無理に字の一部に入れなくても羽だけ独立したイラストで最後にチョコンと書くだけでもかわいさはアップしますね。
羽のイラストは字に関わらずかわいいポイントを増す効果があるので積極的に取り入れていきましょう。
漢字をイラストで表現する
読みづらくなりますが、漢字をイラストで表現するテクニックもあります。
上の例は『風』の字を猫の顔で表現しました。耳やヒゲは完全に後付けで、鼻と口は『虫』の箇所を表現し、猫の輪郭がかぜがまえ(几)の部首を表現しています。
最後に星マークをあしらうことでかわいさもアップです。
もう少し可読性の高いサインがいい場合は、文字の一部にイラストを入れてみてもいいでしょう。
このサインは『宮』と『美』の字の中にハートマークを入れた例です。
ハートのサイズを変えると異なる印象のデザインにもなりますので、いろいろ調整することができますね。
『宀(うかんむり)』のある漢字や、『美』を使ってサインを作りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
漢字をゆるく崩す
複雑な字をゆる〜く表現し、脱力系のかわいさを表しています。
『優』の字が複雑ですが、そこをかなり省略しながらハートマークを入れて表現しました。
続く『衣』も全体の雰囲気に合わせて柔らかく崩し、これらが組み合わさってかわいい漢字サインになります。
複雑な漢字は崩す。このルールを覚えておきましょう。
漢字と他の字を組み合わせる
漢字だけではどうしても堅い印象になりがちです。
そこで、あえて漢字の名前をひらがなで表記し、漢字+ひらがなで作ってみるといいかもしれません。
上の画像は『新田かおりさん(仮名)』のサイン例ですが、漢字とひらがなを組み合わせたデザインです。
大きな『か』が丸い雰囲気を出し、かわいらしく仕上がっていますね。
また、漢字をゆるく崩すテクニックも取り入れていますので、何も知らない人が見たら、まさかこのサインが漢字を崩したものとは思わないでしょう。
表現したい雰囲気に合わせて崩す
春風さくらさん(仮名)のサインは、その名の通り春やさくらといったやわらかい古風なイメージを表現したいと思っていました。
字体はそれに合わせて緩やかな線をつかっているのが特徴です。
余白を効果的に取り入れて、かわいい印象を強調している点にも注目です。
また、さくらの花びらのイラストを入れがちですが、あえてイラストは取り入れず、名前の下に緩く引いた曲線で散る花びらの軌跡を表現しています。
見せたい雰囲気や印象を最初にしっかり決めることで、それに合わせたデザインが可能になります。
漢字サインと他のコンセプトを組み合わせる
ただでさえ特徴的な漢字のサインに、他のコンセプトを組み合わて考えてみましょう。
かわいい雰囲気や、漢字ながらシンプルな雰囲気、縦書きなど、用途に合わせて色々つくってみてください。
難易度が高い段階ですので、うまくいかない時はぜひご署名ネットに作成をお任せください。
『漢字』✕『スタイリッシュ』
これは読めるサインとして作成した例です。
阿の横線を共通のパーツとし、崩しを入れてスタイリッシュに仕上げました。
漢字は元の形からして整っていますので、少しサインらしい要素を加えるだけで見た目の印象が大きく変わってきます。
こちらの記事で紹介しているスタイリッシュに仕上げるコツと組み合わせてみましょう。
▶洗練されたスタイリッシュでクールなサインの作り方をプロが解説します
『漢字』✕『ダイナミックで力強い』
字に力があり、横を突き抜ける線がとても印象的です。
漢字の一部を強調したり、カクカクした線で表現し、漢字が持つ力強さを活かしましょう。
▶ダイナミックで力強いサインの作り方:プロが教えるかっこいいデザインのコツ
『漢字』✕『おしゃれ・個性的』
非常に印象的なデザインが出来上がるでしょう。
他のサインにはない特徴的な動きを取り入れるのがおしゃれサインのコツです。
字のサイズを意図的に変えて表現した例ですね。
左側と右側のサインで好みは分かれると思いますが、おしゃれ・個性的という感性は人によって受け取り方が異なりますので、どちらが正解というわけではありません。
▶おしゃれで個性的なサインの作り方を、サインデザインのプロが教えます
『漢字』✕『シンプル』
文字をシンプルな線で構成し、デザイン的な要素を組み合わせてサインに仕上げた例です。
シンプルな雰囲気にすると可読性は低下する傾向にあります。
書きやすさや見た目のすっきりした印象重視で、使いやすいデザインですね。
サインをシンプルに作るコツはこちらで紹介していますので、漢字と組み合わせてみましょう。
▶エレガントなシンプルさ:プロによる印象的なサイン作成の秘訣
『漢字』✕『かわいい』
漢字だってかわいい印象のサインは作れます。
堅い印象のある線を柔らかく崩すのが基本的な書き方です。
あとは線の組み合わせ方を調整したり、イラストや記号をたくさん使うといいですね。
漢字が持つ意味になぞらえて形を作るテクニックもおすすめです。
例えば上の例のうち『千鶴』というサインは、鶴=鳥のイメージで、羽をあしらったデザインを採用してみました。
▶アイドルみたいなかわいいサインの書き方、作り方【完全ガイド】
『漢字』✕『縦書き』
日本語特有の縦書きサインの魅力をさらに高めてくれる効果が期待できます。
縦書きのサインは、世界広しといえど日本でしか見られない特別なスタイルです。
それを漢字で構成することにより、言葉の通り唯一無二のオリジナリティのあるデザインに仕上がるのです。
縦書きのコツはこちらの記事でたくさん紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
▶縦書きサインの作り方、書き方、活用方法をプロが徹底解説します
『漢字』✕『イニシャルサイン』
非常に特徴的で、かつ実用性の高いサインです。
イニシャルサインは、主に契約書の改変防止のために使われる省略したサインのこと。
上の例は2つの漢字を組み合わせてイニシャルサインとして作成した一例です。
契約書のみならず、日常使いでも非常に便利なスタイルで、フルネームを省略してイニシャルサインとして仕上げるテクニックも使えますね。
イニシャルサインの作り方、考え方はこちらの記事を参考にしてください。
▶一歩先を行くイニシャルサイン:専門家が教える独創的な作り方
子ども向けサイン
お子さまが使うサインの作り方や考え方を紹介しています。
基本的にはお子さまが作りたいように作り、親御さんはそっとアドバイスする程度に留めるのがよさそうです。
▶プロが教える子どものための手書きサイン作り方入門:これで今日から芸能人?
サイン作りの基礎・基本から学び直したい方は、こちらの『サインの作り方:初心者から上級者まで、プロが教えるデザインとテクニック』からまず取り組んでみましょう。
漢字サインはご署名ネットにお任せ
今回紹介したテクニックは一例にすぎません。
かわいい雰囲気、かっこいい雰囲気、一筆で書けるものなど仕上がりの特徴によって漢字サインの作り方・書き方・崩し方は変わります。
ご署名ネットではこれまでの豊富な経験と実績があるからこそバラエティ豊かな漢字サインを作成することができます。
一生付き合っていく漢字サインをお求めの方はご署名ネットにおまかせください。
ご署名ネット代表 兼 デザイナー
守屋 祐輔
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6 件のコメント
野田奈里のサイン考えて下さい!
4つの字を横に突き抜ける線をベースに作るといいと思います!
最初に引っ張ってもいいですし、最後の横線1本にしてもサインらしくシャッと書き終えることができます。
浜田翔介のサインのヒントをください!
お問い合わせありがとうございます。
漢字のサイズにメリハリをつけるといいかもしれません。
比較的崩しやすい田と介はシンプルに小さめに表現し、浜と翔をやや大き目に崩すイメージ図が浮かびました。
複雑そうに見える翔の字ですが、もし私がサインをお作りするなら、波線を連続するような形で翔を一画もしくは二画で表現するかなぁと思います。
境里奈のサインを考えてます!アドバイスください♀️
お問い合わせありがとうございます。
どういう雰囲気で作成したいかにもよりますが、ベースは柔らかい線やカーブを用いたデザインで、里の字の田の箇所をハートで表現してみるのはいかがでしょうか。