このたび、内子町役場様のご協力を賜り、2025年7月29日(火)に内子座楽屋特別企画として「オリジナル手書きサイン作成ワークショップ」を開催いたしました。
この記事では、テクニカルな話は少しだけにして、当日の会場に満ち溢れていた参加者の皆さんの笑顔やワクワクした空気、そしてこの素晴らしい機会を与えてくださった内子町の皆様への、私の尽きない感謝の想いを中心にお伝えしたいと思います。

サインの面白さに、会場の心がひとつになった瞬間
ワークショップは午前と午後の二部制で、総勢40名の皆さんにご参加いただきました。
夏休みということもあり、会場は始まる前から和やかな期待感に満ちていました。
「サインは有名人がするもの?」「自分には関係ないかも…」
最初はそう思っていた方もいたかもしれません。
しかし、有名人のサインを見て誰のものかを当てるクイズが始まると、会場の空気は一変します。
スクリーンに映し出される個性豊かなデザインに、「えー、全然読めない!」「あ、わかった!」とあちこちから歓声が上がり、皆さんの好奇心に火が灯っていくのが分かりました。
「サインって、こんなに自由で面白いんだ!」という発見が、世代を超えて会場の心をひとつにした瞬間でした。
戸惑いから、世界に一つの傑作が生まれるまで
いよいよ、自分だけのサインを作る時間です。
真っ白な紙を前に、多くの方が「どんな形にしよう…」と、腕を組んで悩んでいました。
一人ひとりのテーブルを回り、「この線を繋げると、もっと流れが生まれてかっこよくなりますよ」「そのイラスト、すごく可愛いですね!」と、ほんの少しのコツをお伝えします。
すると、魔法がかかったように、皆さんの表情がパッと明るくなり、止まっていたペンが再び自信を持って動き出すのです。

周りの友達と「それ、いいね!」「どうやって書いたの?」と見せ合ったり、質問し合ったりするうちに、戸惑いは楽しさへ、そして創造への没頭へと変わっていきます。
最終的に完成した作品は、どれもがその人らしさに溢れた、有名人のサインと並べても全く見劣りしない素晴らしいものばかりでした。
これまで数多くのサインを作成してきた私が見ても、思わず唸るような独創的なアイデアに満ちており、皆さんの秘めたる才能に深く感動しました。
小学生の「自分のかっこいいサインができて楽しかった!」という弾けるような声。
中学生の「サインは、受け取った相手にどう見られるかを考える、奥深いものだと知りました」という洞察に満ちた感想。
その一つひとつが、このワークショップの成功を物語っていました。

感謝を込めて――地元への想いと、内子座への架け橋
今回、これほどまでに温かいイベントになったのは、間違いなく内子町が育んできたコミュニティの力のおかげです。
参加者の皆さんと職員の方々が親しげに言葉を交わす光景は、この街の温かさそのものでした。
私自身、愛媛県の出身です。
地元である愛媛の内子町からお声がけいただけたことはこの上ない喜びであり、「地域貢献に役立てるならぜひ!」と、最初にご連絡をいただいた時から、ずっとワクワクしながらこの日を心待ちにしていました。
この日作られた皆さんのサインが、国の重要文化財である『内子座』の楽屋に、期間限定で展示されます。
一流の役者さんたちのサインの隣に自分のサインが並ぶ。
これは、参加していただいた皆さんにとって計り知れない名誉であり、大きな自信に繋がることでしょう。
皆さんの創造力に敬意を表し、このような形で光を当ててくださった内子町の皆様の温かいお心遣いに、心から感謝いたします。

サインの展示の様子

後日、作成した皆さんのサインの特別展示が内子座楽屋で始まったため、現地を訪問しました。
内子座楽屋は、これまでに舞台へ立った役者さんたちの直筆サインが壁一面に並ぶ、まさにサインの聖地のような場所です。
その歴史ある空間に、ワークショップで生まれた皆さんのサインが並んでいる光景を目にした瞬間、胸が熱くなりました。

堂々とした筆跡、思い思いの個性、そして自分のサインを持つという喜び。
どの作品も、名だたる役者さんたちのサインにまったく引けを取らない存在感を放っていました。
壁いっぱいのサインの中に、自分がデザインをお手伝いした作品が並ぶ――それはまさに、言葉にならない感動でした。

展示スペースの周囲には、サイン文化の歴史や背景を紹介した資料もあり、訪れた方々がサインという文化を改めて感じ取れる構成になっていました。
普段は入ることができない特別な楽屋が、参加者の作品によってさらに特別な空間に変わっていたのです。

展示を前にして改めて感じたのは、作品展示という形が持つ力。
それは単なる発表ではなく、自分が何かを残したという確かな証になります。
そして、その証を通じて誰かの心に小さな刺激を与えることができる――そんな素敵な循環が、この展示の中にはありました。
今後の取り組み
ワークショップを終え、改めて地元の人の温かさや繋がりの強さを肌で感じることができました。
日本ではまだまだ馴染みの薄いサイン文化ですが、その普及は、私が地道ながらも情熱を注ぐライフワークです。
こうして皆さんと楽しみながら取り組むことが、少しずつ認知の向上に繋がり、ひいては地域を盛り上げる一助となる。これほどやりがいのある楽しい仕事はないと、改めて感じています。
この場を借りて、ご参加いただいた全ての皆様、そして、このような素晴らしい機会を与えてくださった内子町の皆様に、心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
これからも、サインが持つ楽しさ、そして人と人とを繋ぐ力を信じて、全国で活動を続けていきたいと考えています。
この記事を読んでくださった皆様の街にも、いつかこのワクワクをお届けできる日が来ることを、心から楽しみにしています。
